2021.06.07
སྟོན་པ་དེས་གསུངས་པའི་བསྟན་པའི་རྣམ་བཞག

仏説の全体とその分類

釈尊の行状とその教法(22):釈尊が語られたこと・語らせたことの全体こそが仏説である
クンケン・ジクメワンポ著/編訳:野村正次郎

釈尊が説かれた仏説・正法を、それがどこから発生したのか、という発生源の観点で分類すれば、釈尊の「直説」(kaṇṭhokta)すなわち如来が直接語られたものを発生源とする言葉、釈尊が「加持」(adhiṣṭhāna)したものを発生源とする言葉、釈尊が弟子たちに対して「許可」(anujñāta)したものを発生源とする言葉という三種類に分類できる。

如来が直接語られた言葉

「直説」(kaṇṭhokta)すなわち釈尊が直接語られたその御言葉とは、たとえば『宝徳蔵般若波羅蜜経』のようなものを指している。

如来の加持に由来する言葉

釈尊の「加持」「摂受」(adhiṣṭhāna)を発生源とする言葉には、仏身による加持、仏語による加持、仏意による加持、という身口意の三つの加持がある。第一の仏身による加持とは、たとえば『十地経』がそれである。第二の仏語による加持とは、たとえば『阿闍世王懺悔経』Ajātaśatrukaukṛtyavinodanāがそれである。第三の仏意による加持には、仏意たる大悲による加持、仏意たる禅定による加持、仏意たる真実による加持、という三つがある。第一の大悲による加持は、たとえば『般若心経』がそれである。第二の禅定による加持は、天・龍・夜叉等がそれぞれに讃嘆を奏上し、それを仏が加持した言葉がそれである。第三の真実による加持は、仏の加持の力で、山や樹や虚空や光、そして器楽が正法を語る妙なる音声が聞こえてきた言葉などがそれである。

如来の許可に由来する言葉

許可(anujñāta)を発生源とする仏説とは、経典の本論にあたる正宗分以外の説法の場所や聴衆の名称や人数や由来や縁起を説いた序分、正宗分と正宗分の文脈を繋いでいる流通分、説法の場を共にしていた他の衆生たちが如来の説法に対してコメントをしている相応随喜分がこれにあたる。何故ならば『法集経』Dharmasaṁgītiでは、「比丘たちよ、『如是我聞』という言葉で正法を結集しなくてはならない。関係性や理解の順序もまた示さなくてはならない。」と許可されているからである。

釈尊の説法にはさまざまな衆生が押し寄せてくる

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