菩提道次第略抄

2017-12-30

幾千万の妙徳と至善で降誕され給える御身
無辺の衆生の希みをすべて叶え給える御語
すべて余りなく所知を如実に観じ給う御心
釈迦族の主たる彼の君 君に帰命礼拝せん

無比なる彼の釈師の最勝子
勝者の一切業の責を負い給う
無数の国土に化現し戯れ給う
弥勒菩薩 文殊菩薩に帰命礼拝す

甚だ思議することすら難き仏母の
密意を如実に解し給う閻浮の荘厳
龍樹 無着とこの三地に名高き
この方々を私は礼拝する

両大馬車より善く相承する
甚深見と広大行とのこの道統
過ることもなく円満する枢要
教誡の宝蔵たる燃燈の君に傅かん

一切円満の教説を観る眼となる
賢劫を解脱へと引導す最勝の門
慈みに満ち善巧方便を行ぜられ
明示せる善知識たちに敬礼せん

閻浮のすべての賢者の宝冠の荘厳
この誉れの旗は衆生のなかで輝き靡く
龍樹 無着 この両人相承した
善く相承されたこの菩提道次第

九生の所望を残りなく充たすのだろう
大宝の教説を自在とする大王でもある
百千の賢き典籍の河々を束ねた
吉祥なる善説の大海でもある

一切の教示を矛盾なく証解させ
教説のすべてを誡として示している
勝者の密意を安易に会得させ
大いな悪行の崖からも護るだろう

しかるにインド チベットの賢人たち
多く賢者が拠ったこの最勝の教誡
この三士の道次第へと一体誰が
心を躍らすこともないというのか

すべての教説の核心をよく集約させ
この次第を座の度に説き聴くことは
正法を語り聞法の功能の資糧の蒐集と
確定を起こしその意義を思うとよい

而してこの外なる善資のそのすべての
縁起が善く調うためのその根とは
道を導く最勝の善知識を努めて
思行で正しく師事することにある

こう思い生命をかけて失うことなく
教えに従い成就するという供養で喜ばせる
瑜伽行者たる私も実践をこのようにした
解脱を求める汝もそうするとよいだろう

この有暇の所依は如意宝珠よりも殊勝である
このように得ていることはこのたび限りである
得難く 壊れやすく まるで虚空の稲妻のようである
この状態に思いをよせ すべての世間での活動

それらは籾殻をふるうかの如く虚しいと解する
昼夜を問わず 有効に活用しなくてはならない
瑜伽行者たる私も実践をこのようにした
解脱を求める汝もそうするとよいだろう

死後に悪趣へと転生しない保証はない
この恐怖を救うのは確実に三宝のみである
それ故に帰依を堅固にすべきなのである
その所学を失うことなくすべきである

これも白黒の業果を善く思い
正しい取捨を成就するのに依っている
瑜伽行者たる私も実践をこのようにした
解脱を求める汝もそうするとよいだろう

勝道成就の条件を備える所依を得るまでは
彼方へと向かうことすら適わない
この条件に不備なき因を学ぶのである
この三門は堕罪の垢に汚れてしまっている

殊に業障の消除は極めて重要である
常に四力を備えたものを重用する
瑜伽行者たる私も実践をこのようにした
解脱を求める汝もそうするとよいだろう

苦諦の過失を思うことに励まなければ
如実な解脱への追求は起こり得ない
集諦からの輪廻転生の次第を思わねば
輪廻の根源を断絶する方法知ることはない

それ故 有を厭離する悲壮感を確固とし
何が輪廻へ繋いでいるのかの知を重用する
瑜伽行者たる私も実践をこのようにした
解脱を求める汝もそうするとよいだろう

発心は勝乗の大黒柱である
広大行の基礎であり拠所である
二資糧は一切の錬金の精である
学究の善資を集める福徳の蔵である

こう解することで 勝子勇猛者たちは
大宝たる最勝なる心を掌に抱いている
瑜伽行者たる私も実践をこのようにした
解脱を求める汝もそうするとよいだろう

布施 それは衆生の願いを叶える如意宝珠
慳貪の結節を裁断してくれる最勝なる武器
怯むことなく戦意を鼓舞してくれる勝子行で
その武勇伝は十方へと語り継がれる土台たる

こう解することで 身や財のすべてを
捨て去って善道に賢者たちは依っている
瑜伽行者たる私も実践をこのようにした
解脱を求める汝もそうするとよいだろう

戒 それは堕罪の穢れを禊ぐ浄水である
煩悩の火坑を取り除く月光である
九生の中心で妙高山が輝くように
その権勢に抗えず一切衆生は跪くだろう

こう解することで 正しく授かった戒を
秀れた者たちも瞳のように守り給われた
瑜伽行者たる私も実践をこのようにした
解脱を求める汝もそうするとよいだろう

忍辱 力を持てる者の最勝の荘厳である
煩悩の火坑でのすべての苦行の最勝のもの
瞋恚という毒蛇に敵対する迦楼羅である
誹謗中傷の罵声に対する堅固な鎧である

こう解することで 最勝なる忍辱の武器を
さまざまな種類や仕方で修習されたのである
瑜伽行者たる私も実践をこのようにした
解脱を求める汝もそうするとよいだろう

精進 不退なる堅固の衣を纏うなら
教証の功徳は上弦の月の如く満ちてゆく
一切の行住座臥は有益なものとなるだろう
何をはじめてもその業は意のままに成就する

こう解することで すべての懈怠を断ち
広大なる精進へと勝子たちは従事する
瑜伽行者たる私も実践をこのようにした
解脱を求める汝もそうするとよいだろう

禅定 心を完全に征服した王である
至定すれば不動なること妙高山のようである
放定すればすべての善なる所縁へと向けられる
身心は発動可能なる大楽を引き寄せるだろう

こう解することで 瑜伽自在なる者たちは
散乱という魔軍を制する定に常に依っている
瑜伽行者たる私も実践をこのようにした
解脱を求める汝もそうするとよいだろう

智慧 甚深なる実義をみる眼
有の根源を根刮ぎ断ち切る道
一切の教説で讃嘆される功徳の蔵
愚痴を払闇する最勝の妙灯と謂われる

こう解することで 解脱を求める賢者は
その道を多く勤めて生起されるのである
瑜伽行者たる私も実践をこのようにした
解脱を求める汝もそうするとよいだろう

一心に禅定することだけでは輪廻の
根本を断絶する能力は見られない
奢摩他道を離れた智慧によって
いくら考察しようとも煩悩は退けられない

それゆえに実相に決定を得ている智慧たる
不動なる奢摩他という馬に跨がり
離辺中観の正理の鋭利な武器をもち
辺執のすべての見方を消滅させる

如理に考察する広大なる智慧によって
実義を証する智慧を開かせ給われる
瑜伽行者たる私も実践をこのようにした
解脱を求める汝もそうするとよいだろう

一心に修習し禅定を成就し
如何なる観想も如実な分析となり
妙観察智によってさえ実相を
不動に極めて堅固に等至する

禅定を生起させるのを見て 止観の二つを
双運に成就することに励む者たちは稀有である
瑜伽行者たる私も実践をこのようにした
解脱を求める汝もそうするとよいだろう

三昧智 虚空の如き空性
後得智 幻影の如き空性
この二つを修し方便と智慧は双運し
勝子行の彼岸へと至ると讃嘆される

このように解し 一方に偏ったものに
満足することないのが賢劫の流儀である
瑜伽行者たる私も実践をこのようにした
解脱を求める汝もそうするとよいだろう

このように因果の大乗の
二つの勝道を有する共道を
如実い起こして賢者の先達の
救者に依拠してタントラの大海へ

入り究竟する教誡に依拠する者は
いま得た有暇を活用する者となる
瑜伽行者たる私も実践をこのようにした
解脱を求める汝もそうするとよいだろう

自身の意識で修習するべきため
賢劫の他者をも利益するために
勝者を歓喜させる円満なる道を
平易な言葉で説いた この功徳により

一切衆生も清浄なる賢道から
離れることなきようにと祈願せん
瑜伽行者たる私も実践をこのようにした
解脱を求める汝もそうするとよいだろう

以上、菩提道次第の実践の規定を要約し備忘録としたこれは、多聞の比丘世捨人ロサンタクペーペルが、大ドク山麓ゲデン・ナムパル・ゲルウェーリンにして著したものである。