2020.03.30

新型コロナウイルス感染症に関するダライ・ラマ法王によるメッセージ

(チベット語原文からの仮訳)

ダライ・ラマ法王は本日新型コロナウイルス感染症の拡大に関して、みなさまにメッセージを発信されました。さっそくチベット語原文からの翻訳(草案)を作成しましたので、紹介させていただきます。

現在世界各地で感染症拡大の危機に直面せざるを得ないという緊急事態が続いてます。また同時に地球全体は、急激な気温上昇等をはじめとする様々な危機にいま直面しています。こうした状況にも関わらず、インド政府をはじめ世界各地で、それらへの対策に取り組み続けていることは、大変素晴らしく、心よりの敬意を表したいと存じます。

古代インドの文明では、百千万個の地球は、これまでも生成していく時期・継続している時期・滅亡してゆく時期・不在の時期(成劫・住劫・滅劫・空劫)という状態を途絶えることなく繰返し、これからもそれを繰返していく、と謂われています。この地球が滅亡していく時には、武器や疫病が原因となって滅亡していく、ということもまた説かれています。私たちが現在目撃しているものは、こうした伝説に類するものように思われますし、様々な創造・破壊が起り続けているいまのこの時には、地上の生命体のその全体が、そして人類が、それに対抗しながらも生を営み続けなくてはなりません。

恐怖に慄くことは、苦難から解放してくれるものではありません。だからこそ、私たちはどんな危機に直面しようとも、勇気を失わず、心を奮い立たせる必要があります。そして、私たち人類がもっているこの知性と、さらには現代の発展した科学技術との両方を使用し、この問題の解決に取り組む必要があるのです。

もしも解決できない苦しみに遭遇するとしても、

もしも改めることができるなら、
憂うべきことなど一体何があるのだろうか。
もしも改めることができないのならば、
憂うことで一体何の役に立つというのだろうか。

シャーンティデーヴァ『入菩薩行論』

と説かれている通りなのですから、恐怖に慄くべきではないのです。

感染症は人類全体が直面している危機です。この地球は、相互に依存しているものですので、私たちの人類すべての能力をいま集結する必要があります。人類全体として、すべての公共団体・個人の両者が予防対策へと励まなくてはなりません。そしてこの感染症を克服するためには、多くの国々がお互いに協力する必要があります。私たちが現在居住しているこのインドからも近隣の8カ国に対する救援活動の計画が進められ、そのような活動は極めて重要なことであると思います。こうした活動は、将来的にもしも別の危機に直面した場合でも、良き先例となることは明らかです。

いまこの時に、私たちは無関心で見逃してはならないことは、今回の感染症予防への取り組みがきっかけとなり、工業などに従事している労働者をはじめ、生計の安定していない困窮した人々の負担が増大することのないように、慎重な配慮がなされながら緊急対策をしなくてはならない、ということです。またこうした重大な危機に取り組んでおられる医師・看護師等の医療従事者のみなさまに対しては謝意を申し上げます。

末尾ではございますが、世界各地においてのすべての苦難に直面している場所にお住まいの、家族、そして友人のみなさまに、心よりのお見舞いを申し上げます。またこの感染症が速やかに止滅し、この地球上がこれまでと同じように幸せで、そして楽しみに満ちたものとならんことをお祈り申し上げます。

常に諸仏への請願と祈願とともに

ダライ・ラマ 2020年3月30日 (印)

(署名)


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