
2025年7月6日(日)、ダライ・ラマ法王猊下の満90歳のお誕生日を奉祝するため、大本山大聖院(広島県廿日市市・宮島町)観音堂にて卒寿奉祝法会が開催され無事に成満しましたのでご報告させていただきたい。
大本山大聖院とダライ・ラマ法王
大本山大聖院は、弘法大師空海が唐から密教を請来した時、霊峰・弥山で修行をされた大同元年(806年)に開創された関西屈指の古刹である。厳島神社の裏手に位置する本坊には、弥山の本尊の祈祷を行う摩尼殿、厳島大明神の本地仏、本尊十一面観音菩薩を主尊とする観音堂、波切不動明王を本尊とする鳥羽天皇の勅願堂、弘法大師を本尊とする大師堂、七福神を安置する八角万福堂、阿弥陀三尊を祀る阿弥陀堂、薬師如来と十二神将を祀る薬師堂をはじめ、五百羅漢像や数多くの地蔵菩薩が境内に安置されている世界遺産・宮島の最古最大の大伽藍である。
観音堂は、中央内陣には、厳島大明神の本地仏、行基菩薩作と言われている本尊十一面観音菩薩を主尊として祀っており、その仏前には2002年にデプン・ゴマン学堂の僧侶たちが建立した観音菩薩の大砂曼荼羅が開眼以来いまもそのままの形で保存されており、両脇には十六羅漢などが安置されている十一面観音菩薩を本尊とする仏殿である。
右脇には弥勒見度殿があり、チベット・ラサのデプン大僧院の弥勒菩薩「チャンパ・トンドルマ」(見ただけで解脱する弥勒像)の写の仏像を本尊とし、チベット仏教式の多くの仏像を安置している。無量寿如来・薬師如来・怖畏金剛尊の砂曼荼羅、チベットに伝承する両部曼荼羅の二幅の大タンカ、デルゲ版チベット大蔵経、カダム宝塔など、2006年の開創1200年祭にダライ・ラマ法王猊下ならびにデプン・ゴマン学堂の職集によって開眼善住され、その記念に日本で初めてダライ・ラマ法王猊下が両部曼荼羅の伝法灌頂を行われた際の根本道場となった。それ以来、毎月8日には弥勒菩薩の根本聖典『現観荘厳論』をデプン・ゴマン学堂の僧侶たちが読誦し、仏法興隆・衆生済度・世界平和への祈りを続け、今日まで四半世紀にわたってチベット・日本の仏教交流事業の他に類のない活動拠点として現在進行形で、毎日世界各地から多くの参拝客が来訪し、その流れは途絶えることはない。



ダライ・ラマ法王猊下からの嬉しいメッセージ
2025年7月2日、ダライ・ラマ法王猊下から第15回チベット宗教指導者会議に対して勅書が発表された。多くの篤信の関係者からの要請に応え、ダライ・ラマの次世代への継続の必要性について完全に同意され、今後それが実現することをご自身でも願っている、とのことであった。(和訳はこちらから)
この声明は、ダライ・ラマ法王猊下ご自身が、死後も現在と同じようなダライ・ラマとしてこの地上に出現なされたいというご意志の表明であり、それは観音菩薩が衆生を救済するためにこの地上に出現する生身の人間として、これまでインドで36名、10名の古代チベットの王たち、14名のネパール・チベットの行者や聖人といった歴代60代を経て、ダライ・ラマとしては第一世ゲンドゥンドゥプ以来、14代継続してきた化身譜の継続を、今後も15世、16世と継続していきたい、ということを意味するものであったので、チベット仏教社会は歓喜し、大いに歓迎されることとなったが、不詳の弟子たちが、今後どのようなことがあろうとも、決して見捨てることはなく、常に「観自在菩薩」という尊称の通り、私たちを常に見守り続け、指導していきたい、という大変ありがたいご意思のご表明となったのである。
また2025年7月6日未明には、法王猊下から世界中でお誕生日をお祝いする行事に関係するすべての方々へメッセージが発表され、ご自身の誕生日は、心の平和と他人への思いやりを心に育て、世界をよりよい場所へとするために貢献したいという菩薩の決意を改めてする機会として欲しい、と願われていること、また今後も四つの使命を中心に釈尊やシャーンティデーヴァの教えにあるように、衆生たちが存在する限り、ご自身も常に寄り添い、衆生たちの苦しみを少しでも取り除くために常に祈っておられる、という内容であった。弊会でもこれを早朝に和訳し、日本各地でも行われているダライ・ラマ法王お誕生の奉祝行事に参加される方々とシェアさせて頂くことができた。(和訳はこちらから)


ダライ・ラマ法王猊下卒寿奉祝法会
2025年7月6日(日)、奉祝法会が執り行われた。法会は午前11時に開始され、当日は最高気温35度を超える猛暑日となったにもかかわらず、スペインをはじめとする海外、ならびに神奈川・岐阜・愛知・鳥取・九州各地から多くの参詣者が参集した。
法要は、法王猊下の御影を回廊より引導し、かつて猊下を玉座に迎えた際と同様に式衆一同が白いカターを捧げて法要がはじまった。
法要はまずゴペル・リンポチェがチベット語で始められ、帰依・発心、礼拝・供養・懺悔・随喜・勧請・祈願・廻向の七支行に続き、猊下の福寿が百劫にわたり堅固であり、御意が自然に成就することを願う祈りが捧げられ、猊下ご自身の祈願文が唱えられた。引き続き、日本側からは般若心経・光明真言・観音菩薩御真言・弥勒菩薩御真言・弘法大師宝号などが唱えられ、リンポチェと吉田座主の両名によって特製ケーキの入刀が行われ、本尊・観音菩薩、ならびに本尊と無二の存在である法王猊下に奉献された。特製ケーキほか様々な供物が引き続き参列者全員に配られ、一同でダライ・ラマ法王猊下の御宝号を念誦しながら供物をいただき、順次カターを奉納し、祝賀の意を表することとなった。
その後ゴペル・リンポチェ猊下より、デプン・ゴマン学堂を代表し、大聖院吉田座主ご一門に対する謝辞が述べられた。また、法王猊下が掲げられている「四つの使命(人類の基本的価値の再認識、宗教間の調和、チベット文化の保護、古代インド由来の叡智の現代的意義の普及)」に関連し、参列者一同がその実現に向けて共に歩めるようにと挨拶をされた。続いて、吉田座主からもご挨拶があり、大聖院とダライ・ラマ法王とのご縁が紹介されるとともに、法王猊下よりは、慈悲の種を常に蒔き、蒔いた後も放置せず、困難にある人々に目を向け、その種を育てていくことの重要性を大切な教えとして授かったことが紹介された。















「慈愛の年」がはじまりました
今回のダライ・ラマ法王猊下の卒寿奉祝法会は、猊下の益々のご長寿を祈り、その慈悲の教えを継承する意義を改めて確認する貴重な機会となりました。国内外から多くの参列者が一堂に会し、仏法の縁に結ばれた意義深い会として、無事に成満いたしました。これから来年の法王のお誕生日の日に向けて、チベット亡命政府ならびに亡命社会では「慈愛の年」として、すべての衆生がどんな時でも幸せであることを望む、「慈愛の年」キャンペーン期間となります。これは同時に一切衆生の幸せを願う「大慈心」、そして一切衆生が苦しみから逃れることを願う「大悲心」を私たち心に育ててゆくことで、心の平安を実現していこう、というキャンペーンです。
三世十方の如来の大慈心が人格化して出現した弥勒菩薩、三世十方の如来の大悲心が人格化して出現した観音菩薩に、この一年間を通じて、みなさまが一歩ずつ近づいていけるように、弊会ウェブサイトでは歴代のダライ・ラマ法王の教えをなるべく紹介しつつ、その教えをみなさまと共に学んでいける機会をできるだけ多く準備させて頂きたい、と思います。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。


