第5章 同一と別異の規定


作成日: 2009-08-17 最終更新日: 2016-09-23 作成:事務局

他学説の否定

ある人が言う、「同一個体であるならば、同一である」と。事物と無常との二つ、主題。同一であることになる。同一個体であるから。遍充承認済。「不成立」ならば、事物と無常との二つ、主題。同一個体であることになる。同一本質であるから。「不遍充」ならば、遍充は有ることになる。同一個体・同一本質・同一本性は同義であり、述語等価遍充であるから。原帰謬で「その通り」ならば、事物と無常との二つ、主題。同一ではないことになる。多数であるから。「不成立」ならば、事物と無常との二つ、主題。多数であることになる。相互に別異であるから。「不成立」ならば、事物と無常との二つは相互に別異であることになる。事物は無常と別異であり、かつ、無常は事物と別異であるから。証因は各々成立している。無我であるから。

ある人が言う、「同一個体であるならば、同一実体である」と。認識対象と常住との二つ、主題。同一実体であることになる。同一個体であるから。遍充承認済。「不成立」ならば、認識対象と常住との二つ、主題。同一個体であることになる。同一本質であるから。「不成立」ならば、認識対象と常住との二つは、同一本質であることになる。認識対象は常住と同一本質であり、かつ、常住と認識対象は同一本質であるから。「第一証因不成立」ならば、認識対象、主題。常住と同一本質であることになる。常住であるから。「第二証因不成立」ならば、常住、主題。認識対象と同一本質であることになる。認識対象であるから。原帰謬で「その通り」ならば、認識対象と常住との二つ、主題。同一実体ではないことになる。実体ではないから。「不成立」ならば、認識対象と常住との二つ、主題。実体ではないことになる。事物ではないから。「不遍充」ならば、遍充は有ることになる。事物と実体との二つは同義であるから。

ある人が言う、「事物と同一実体であれば、同一実体である」と。柱と壺の二つ、主題。同一実体であることになる。事物と同一実体であるから。遍充承認済。「不成立」ならば、柱と壺の二つ、主題。別異実体であることになる。事物の特殊であるから。原帰謬で「その通り」ならば、柱と壺の二つ、主題。同一実体ではないことになる。別異実体であるから。「不成立」ならば、柱と壺の二つ、主題。別異実体であることになる。事物であり、かつ、実体が相互に関係が無い、別の対象であるから。

ある人が言う、「認識対象と同一本質であれば、同一本質である」と。柱と壺の二つ、主題。同一本質であることになる。認識対象と同一本質であるから。遍充承認済。「不成立」ならば、柱と壺の二つ、主題。認識対象と同一本質であることになる。認識対象であるから。原帰謬で「その通り」ならば、柱と壺の二つ、主題。同一本質ではないことになる。関係が無い別の対象であるから。

ある人が言う、「同一類であれば、同一本質である」と。白斑牛と黒背牛との二つ、主題。同一本質であることになる。同一類であるから。遍充承認済。「不成立」ならば、白斑牛と黒背牛との二つ、主題。同一類であることになる。孤立同一類であるから。「不成立」ならば、白斑牛と黒背牛との二つ、主題。孤立同一類であることになる。どんな人でも心を傾けることにより見るだけでそれであると思う意識を自然に起すことの出来る法であるから。原帰謬で「その通り」ならば、白斑牛と黒背牛との二つ、主題。同一本質でないことになる。本質が別異であるから。「不成立」ならば、白斑牛と黒背牛との二つ、主題。本質が別異であることになる。互いに関係無い別の対象であるから。

ある人が言う、「認識対象として同一類であれば、同一類である」と。馬と牛の二つ、主題。同一類であることになる。認識対象として同一類であるから。遍充承認済。「不成立」ならば、馬と牛の二つ、主題。認識対象として同一類であることになる。別異個体であるから。原帰謬で「その通り」ならば、馬と牛の二つ、主題。同一類ではないことになる。類が別異であるから。「不成立」ならば、馬と牛の二つ、主題。類が別異であることになる。類が一致していないから。「不成立」ならば、馬と牛の二つ、主題。類が一致していないことになる。類が同様ではないから。「不成立」ならば、馬と牛との二つは類が同様ではないことになる。同様ではないない類という設定すべきものがが有るからである。

ある人が言う、「同一類であれば、肯定である孤立同一類である。」と。壺の虚空と家の虚空との二つ、主題。肯定である孤立同一類であることになる。同一類であるから。遍充承認済。「不成立」ならば、壺の虚空と家の虚空との二つ、主題。同一類であることになる。否定対象が同一類であるから。「不成立」ならば、壺の虚空と家の虚空との二つ、主題。否定対象が同一類であることになる。別異であり、かつ、同一類の否定対象を否定排除しただけの絶対否定であるから。第一証因は簡単。「第二〔証因〕不成立」ならば、壺の虚空と家の虚空との二つ、主題。同一類の否定対象を否定排除しただけの絶対否定であることになる。同じ否定対象「触れる妨げ」を否定排除しただけの絶対否定であるから。「不成立」ならば、壺の虚空と家の虚空との二つ、主題。同じ否定対象「触れる妨げ」を否定排除しただけの絶対否定であることになる。触れる妨げを否定排除しただけの絶対否定であるから。「不成立」ならば、壺の虚空と家の虚空との二つ、主題。触れる妨げを否定排除しただけの絶対否定であることになる。無為の虚空であるから。「不遍充」ならば、遍充は有ることになる。「触れる妨げを否定排除しただけの絶対否定」とは無為の虚空の定義であるから。原帰謬で「その通り」ならば、壺の虚空と家の虚空との二つ、主題。肯定である孤立同一類ではないことになる。肯定ではないから。「不成立」ならば、壺の虚空と家の虚空との二つ、主題。肯定ではないことになる。否定であるから。「不成立」ならば、壺の虚空と家の虚空との二つ、主題。否定であることになる。無為の虚空であるから。

ある人が言う。「安危同一であれば、安危実体同一である」と。黒砂糖の色彩と黒砂糖の香との二つ、主題。安危同一実体であることになる。安危同一であるから。遍充承認済。「不成立」ならば、黒砂糖の色彩と黒砂糖の香との二つ、主題。安危同一であることになる。成立時を等しくし、存続時を等しくし、消滅時を等しくするものであるから。「不成立」ならば、黒砂糖、主題。(x)の色彩と(x)の香との二つは成立時を等しくし、存続時を等しくし、消滅時を等しくするものであることになる。(x)は八極微実体が集合した塊であるからである。原帰謬で「その通り」ならば、黒砂糖の色彩と黒砂糖の香の二つ、主題。安危同一実体ではないことになる。同一実体ではないから。「不成立」ならば、黒砂糖の色彩と黒砂糖の香の二つ、主題。同一実体ではないことになる。別異実体であるから。「不成立」ならば、黒砂糖、主題。(x)の色彩と(x)の香との二つは別異実体であることになる。(x)は八極微実体が集合した塊であるから。

ある人が言う。「実体類同一であるならば、同一実体である」と。同一孤立である質料因たる麦から生じた大小二つの麦粒、主題。同一実体であることになる。実体類同一であるから。遍充承認済。「不成立」ならば、同一孤立である質料因たる麦から生じた大小二つの麦粒、主題。実体同一類であることになる。別異でありかつ、それ自身の同一の質料因から生じたものであるからである。「不遍充」ならば、遍充は有ることになる。実体類が同一か同一でないのかということは、質料因が同一であるのか同一でないのかということを必ず指しているからである。原帰謬で「その通り」ならば、同一孤立である質料因たる麦から生じた大小二つの麦粒、主題。同一実体ではないことになる。同一本質ではないから。「不成立」ならば、同一孤立である質料因たる麦から生じた大小二つの麦粒、主題。同一本質ではないことになる。別異個体であるから。「不成立」ならば、同一孤立である質料因たる麦から生じた大小二つの麦粒、主題。別異個体であることになる。互いに関係しない異なった対象であるから。<

自説の設定

同一の定義はある。別々ではない法がそれであるから。同一を分類すると三つある。自体孤立の同一・同一個体・同一類との三つがあるから。自体孤立の同一の定義は有る。自体孤立が別々ではない法がそれであるから。定義基体は有る。所作と所作との二つがそれであるから。有と自体孤立が同一の定義は有る。有と自体孤立が各々ではない法がそれであるから。定義基体は有る。有がそれであるから。一切法について原理は同じである。

同一個体の定義は有る。個体が別々ではない法がそれであるから。個体同一・本性同一・本質同一は同義である。認識対象と個体が同一の定義は有る。認識対象と個体が各々ではない法がそれであるから。定義基体は有る。有がそれであるから。 同一実体の定義は有る。実体という観点で別々ではないものとして生じる法がそれであるから。定義基体は有る。所作と無常との二つがそれであるから。

同一類の定義は有る。種類が別々ではない法がそれであるから。同一類を分類すると二つある。孤立類同一体・実体類同一体との二つが有るから。

孤立類同一体を分けると二つ有る。肯定たる孤立類同一体と否定たる孤立類同一体との二つが有るからである。肯定である孤立類同一体の定義は有る。どんな人でも心を傾けることにより見るだけでそれであると思う意識を自然に起すことの出来る法がそれであるから。定義基体は有る。金の壺と銅の壺との二つがそれであるから。肯定である孤立類同一体を分類すると三つ有る。認識たる孤立類同一体・色たる孤立類同一体・不相応行たる孤立類同一体との三つがあるからである。認識たる孤立類同一体は設定可能である。デーヴァダッタの眼識とヤジュニャダッタの眼識との二つがそれであるから。色たる孤立種類の同一体は設定可能である。栴檀の柱とイトスギの柱との二つはそれであるから。不相応行たる孤立類同一体は設定可能である。声の所作と壺の所作との二つがそれであるから。否定である孤立類同一体の定義は有る。同類の否定対象を否定しただけの別異である絶対否定がそれであるからである。定義基体は有る。壺人無我と柱人無我との二つがそれであるから。

実体類同一体の定義は有る。それ自身の直接的な同一の質料因から産み出された別異の有為、がそれであるからである。実体類同一体を分類すると三つ有る。色たる実体種類の同一体・認識たる実体類同一体・不相応行たる実体類同一体との三つが有るからである。色たる実体類同一体は設定可能である。自己の質料因である同一の粘土から出来ている白い土壺と青い土壺との二つがそれであるからである。認識たる実体類同一体は設定可能である。それ自身の直接的な同一の質料因から生じた別異の認識がそれであるから。不相応行である実体類同一体は設定可能である。自己の同一質料因から生じた声の所作と声の無常との二つはそれであるから。

別異の定義は有る。別々な法がそれであるから。別異を分けると三つ有る。自体孤立別異・別異個体・別異類の三つが有るからである。

自体孤立の別異の定義は有る。自体孤立が別々の法がそれであるから。定義基体は有る。柱と壺の二つがそれであるから。認識対象と自体孤立が別異の定義は有る。認識対象と自体孤立が別々の法がそれであるから。定義基体は有る。柱がそれであるから。一切法について原理は同じである。

別異個体の定義は有る。個体が別々な法がそれであるから。別異個体・別異本質・別異本性の三つは同義である。定義基体は有る。常住と無常との二つがそれであるからである。

別異類の定義は有る。類が別々である法がそれであるから。別異類・類が対応していない法・類が相似していない法・類が同一ではない法、これらは同義である。類が相似していないものを分類すれば、二つ有る。孤立の類が相似していないもの・実体類が相似していないもの、という二つがあるからである。孤立の類が相似していないものは設定可能である。馬と牛との二つはそれであるから。実体類が相似していないものは設定可能である。認識と物質との二つはそれであるから。

論難の排除

ある人が言う、「金壺と銅壺の二つ、主題。同一類であることになる。孤立類同一であるから。『その通り』ならば、金壺と銅壺の二つ、主題。同一類ではないことになる。別異類であるから。『不成立』ならば、金壺と銅壺の二つ、主題。別異類であることになる。実体別異類であるから。」と。遍充しない。「不成立」ならば、金壺と銅壺との二つ主題。実体別異類であることになる。別々の自己の直接質料因から生じた別異の有為であるから。「不成立」ならば、金壺と銅壺の二つ、主題。別々の自己の直接質料因から生じたものであることになる。金壺というこれは金から生じているけれども銅から生じたものではなく、銅壺というこれは銅から生じているけれども、金から生じているものではないからである。

ある人が言う、「認識対象と常住との二つ、主題。同一実体であることになる。実体が別々ではない法であるから。」と。遍充しない。「不成立」ならば、認識対象と常住との二つ、主題。実体が別々ではない法であることになる。実体が別々ではないものであり、かつ、法であるからである。「第一証因不成立」ならば、認識対象と常住との二つ、主題。実体が別々ではないことになる。実体が別異ではないからである。「不成立」ならば、認識対象と常住との二つ、主題。実体が別異ではないことになる。実体ではないからである。「不成立」ならば、認識対象と常住との二つ、主題。実体ではないことになる。常住であるから。

ある人が言う、「有と無との二つ、主題。自体孤立が別異であることになる。自体孤立が別々の法であるから。『不成立』ならば、有と無との二つ、主題。自体孤立が別々の法であることになる。自体孤立が別々であるから。『不成立』ならば、有と無との二つ、主題。自体孤立が別々であることになる。自体孤立が同一ではないから。」と。遍充しない。有と無との二つ、主題。自体孤立が同一ではないことになる。(x)の自体孤立は無いからである。「不成立」ならば、有と無との二つ、主題。(x)の自体孤立が無いことになる。(x)は無いから。

ある人が言う、「事物だけと事物との二つ、主題。実体が別々であることになる。同一実体ではないから。」と。遍充しない。「不成立」ならば、事物だけと事物との二つ、主題。同一実体ではないことになる。実体ではないから。「不成立」ならば、事物だけと事物との二つ、主題。実体ではないことになる。事物ではないから。