Last Updated: 2020.03.20
HIROSHIMA INTERNATIONAL PEACE SUMMIT 2006

緒言

Opening Remarks
国連訓練調査研究所広島事務所 所長 ナスリーン・アジミ

本日この場にいることは大変な喜びであり、誠に光栄なことです。広島青年会議所のみなさまがこの集いのために並々ならずご尽力されたことをまず言及させていただきます。

今朝早く広島平和記念公園を散策してまいりました。みなさまのなかにはお気付きの方もいらっしゃると思いますが、そこにはさまざまな樹があります。いまは紅葉がちょうど美しい彩りを見せている時期です。樫、松、杉、楢、楓、桜はもちろんのこと、広島の樹でもある、美しいピンクの夾竹桃などたくさんの樹々に囲まれています。これらは被爆した直後から植えられ、世界各地から贈られてきたものもあります。これらの樹々に託されている希望や絶望のなかでの人々の連帯感を思うとき、わたしはいつもスーフィの先生が教えてくれた次の言葉を想い出します。

“未来 の引力は過去の圧力よりもはるかに強い”

私はこれまでの人生のすべてを国際連合のために捧げてまいりましたが、この広島の原爆ドームの側ほど国連旗がたなびくのに相応しい場所はないと思っています。この広島のような普遍性をもった場所は数少なく、ここは人類すべてに対して語りかけている場所です。だからこそ、本日のパネリストのような素晴らしい方々を、頻繁にお迎えできるのではないかと思います。

また広島はある意味で“奇跡”でもあります。最近会ったある人が私に言ったことですが、その人は広島には住めないそうです。というのも、ここに住んでしまえば、広島の重要性を忘れてしまうかも知れないからだそうです。この人が私に何を伝えたかったかは理解できますが、同時に私は広島とは単なる悲しみの地ではないことに気がつきました。ここは、重厚厳粛であり、そしてまた、真摯な場所なのであります。それは過去の悲劇を見れば明らかに避けられない事実です。しかしながら、広島は同時に希望と生命の地でもあります。ここは原子爆弾によって灰と化したその大地から“復活”したその場所でもあるからです。私たちはこのような特別な場所に自分が住んでいるのに、日常的にはその事実を忘れてしまいがちです。

今日の世界で起こっているさまざまな出来事を考えるとき、広島は未来のために選ぶべき二つのシナリオを語ってくれます。第一のシナリオは、私たちがこの先再び犯してはならないことが何なのか、という警鐘です。そしてもう一つのシナリオは、私たち人類がもう一度やり直そうとする約束なのです。この選択肢のどちらを選ぶのか、それがこれからの二日間で議論されるのだと思います。

最後に、みなさまにケンブリッジ大学の数学・物理学者であるスティーブン·ホーキンスが六月に香港で語ったことを紹介します。彼は人類がこの先百年もこの地上で生き延びられるとは信じられないそうです。核戦争、地球温暖化、未知の病気などが、今後百年以内に私たち人類を破壊へと導くと言うのです。彼の助言は、なるべくはやく宇宙のどこかにコロニーを作った方がいい、ということでした。しかしながら、私たちにはまだ選ぶ時間があるのではないでしょうか。ただし、今決断し、行動を起さなければなりません。今回広島に来てくださった、ダライ·ラマ法王、デズモント·ツツ大主教、ベティ·ウィリアムズ氏のような大家や、広島に来られる多くの素晴らしい方々によって、いまこの場所で、人類がこの先取るべき二つの運命が示されているということに気付かされます。私たちはそのどちらかを選択しなければなりません。そして私はその選択が正しいものとなるよう願ってやみません。

平和記念公園の爽やかな秋風が、これからもずっと何世紀も吹きつづけますように。

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Session I 普遍的責任について