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デルゲ版「チベット大蔵経論疏部」の雑部は、まず第一に本大蔵経の成立に関わったチベット人の学者や訳経僧などが著したチベット撰述文献のうち貴重なものや題名や作者が不明であるが重要なものを収集して収録したものが3帙半33篇、第三に本大蔵経全体の善資廻向ならびに吉祥偈などとして、さまざまな廻向文・吉祥偈などを46篇収録したもの、新規に訳出されて追加された経典や論疏ものが三種類のものが合計9帙あります。
そのなかには梵語をチベット語に訳出する際に多くの賢者たちが作成した『翻訳名義大集』やその語釈である『二巻本訳語釈』やトンミの『三十頌』『性入法』といったチベット語文法の根本聖典、チベット最初の僧院となったサムイェー僧院で前伝期に活躍したペルヤン、ペルツェク、イェシェデの著作や『デンカルマ目録』などといった前伝記の稀覯書、『普賢行願讃』『弥勒祈願王』『金光明経誓願文』『入菩薩行論廻向章』などをはじめとする祈願文、『パーニニ文法論』、スティラマティの『倶舎論実義疏』など様々な小品を合わせて合計118篇の著作が収録されています。
「チベット大蔵経論疏部」(テンギュル・丹殊爾)は、釈尊の御教えの真意を解釈するインド原典の論書をチベット語へと7世紀から500年以上の年月をかけて訳出したものを集成したもので、現在人類が保有するインド仏教の伝統的な注釈書の最大かつ最古のコレクションです。そのデルゲ版は、1744年に木版にて開版されたもので、正式名称を、「一切知者日親釈迦牟尼如来の仏語聖教を注釈する論書を雪国チベットの言語へと奉訳した一切の法施が不断に行われる神変の祖母・圓滿劫福徳雲海」といい、デルゲ大印経院にその原板の板木が今日も安置されていることから「デルゲ版テンギュル」と呼ばれるものであり、全213帙64512版あり、「テンギュル・リンポチェ」とも呼ばれています。
このデルゲ版は、中央チベットのシャル僧院で1334年にクンガ・トンドゥプが施主となり収集され、プトゥン・リンチェンドゥプが校訂者としてナルタン僧院の写本テンギュルを筆者したものを底本として増広して編集し、1334年に完成した「シャル写本テンギュル」、タクツェ宮殿にてシトゥ・チューキ・ジュンネーが責任編集した写本テンギュルほか四本を原本として編纂され、1737年にデルゲの法王テンパ・ツェリンが施主となって発願し、その後1744年まで7年間をかけて最終的には大校閲師シュチェン・ツルティム・リンチェンが責任校正し開版したものです。