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デルゲ版「チベット大蔵経論疏部」の経疏部は、大乗不共の法のうち、教主釈迦牟尼如来の後転法輪に対する印度撰述の註釈書が収録されています。冒頭の無着菩薩の『解深密経釈』『仏随念経釈』『法随念経釈』『僧随念経釈』をはじめ、龍樹菩薩の『稲芉本頌』『稲芉経疏』、世親菩薩の『十地経論』『無尽慧所問経註』『縁起経釈』などの著作群が続きます。また漢文からチベット語訳された圓測作『解深密経疏』と『妙法蓮華経註』という漢訳から翻訳された2篇が含まれています。これらのすべては釈尊が転じられた第三の後転法輪に関するもので、合計で10帙38篇の著作が収録されています。
「チベット大蔵経論疏部」(テンギュル・丹殊爾)は、釈尊の御教えの真意を解釈するインド原典の論書をチベット語へと7世紀から500年以上の年月をかけて訳出したものを集成したもので、現在人類が保有するインド仏教の伝統的な注釈書の最大かつ最古のコレクションです。そのデルゲ版は、1744年に木版にて開版されたもので、正式名称を、「一切知者日親釈迦牟尼如来の仏語聖教を注釈する論書を雪国チベットの言語へと奉訳した一切の法施が不断に行われる神変の祖母・圓滿劫福徳雲海」といい、デルゲ大印経院にその原板の板木が今日も安置されていることから「デルゲ版テンギュル」と呼ばれるものであり、全213帙64512版あり、「テンギュル・リンポチェ」とも呼ばれています。
このデルゲ版は、中央チベットのシャル僧院で1334年にクンガ・トンドゥプが施主となり収集され、プトゥン・リンチェンドゥプが校訂者としてナルタン僧院の写本テンギュルを筆者したものを底本として増広して編集し、1334年に完成した「シャル写本テンギュル」、タクツェ宮殿にてシトゥ・チューキ・ジュンネーが責任編集した写本テンギュルほか四本を原本として編纂され、1737年にデルゲの法王テンパ・ツェリンが施主となって発願し、その後1744年までの7年間をかけて最終的には大校閲師シュチェン・ツルティム・リンチェンが責任校正して、開版したものである。