2020.05.26
ལེགས་པར་བཤད་པའི་ཆུའི་བསྟན་བཅོས་ལུགས་གཉིས་རླབས་ཕྲེང་བརྒྱ་ལྡན་

娑婆世界で我々が享受するすべてのものは、過去の業に応じた果報である

『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第64回
訳・文:野村正次郎

貧困と富裕 冷静と粗暴 高貴と下賤

すべては過去の業に応じた果報である

水輪が攪拌されたことに対応して

山脈や陸地といった環境は出来ている

64

須弥山を中心とした娑婆世界である器世間はすべて業によって生成されたものである。仏教では因果応報を説き、世界の創造主の存在を認めていない。この娑婆世界がどのように出来ているのか、ということは『阿毘達磨倶舎論』などに世界創造説として伝承されているものがあり、古代インドの神話や伝説がそのまま採用されている。

近年ダライ・ラマ法王は、この仏教の宇宙観は、現代の科学的な見地から見てみると単なる伝説に過ぎないので、採用する必要がない、とは仰っているが、実際に仏教を理解する上で、この須弥山世界の創造説についてはある程度知識としては知っておかなければ、仏典を読む上では支障となることも多いし、中国・日本におけるかつての宇宙観はほぼこれに準じているものであるので、多少は理解することが望ましいであろう。

和訳で原典を読む場合には、山口益・舟橋一哉『倶舎論の原典解明:世間品』(法蔵館)がよいだろうし、簡単に知りたい場合には、定方晟『須弥山と極楽/仏教の宇宙観』(講談社現代新書)が利用しやすい。後者は極楽や地獄についての地理的な情報を詳しく紹介しているので、一般の方にも読みやすいものである。さらに詳しく知りたい方は定方晟『インド宇宙論大全』(春秋社)などを読んでみてもよいだろう。これらの古代の宇宙観を知ることは、阿弥陀如来の極楽浄土とはどのような場所なのか、日本の真言密教で説かれている大日如来の大悲胎蔵曼陀羅や金剛界曼陀羅とはそもそもどのような形状なのか、ということを知る上で大変役に立つものである。

ここでは簡単に解説しておくと、須弥山世界には風輪があり、その上に水輪がその風によって動き攪拌されたことによって、須弥山を中心とする四大大陸(大洲)が生成されていく。それと同じように、貧困・富裕・冷静さと乱暴さ・高貴であること、下賤に生まれることなど我々が現世において享受しているもののすべてが過去の業の結果である、と本偈では述べている。この須弥山世界を諸仏に捧げる供養が曼陀羅供養となる。

上のタンカを真上から見た図

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