2011.10.31

ダライ・ラマ法王大阪特別講演「ダライ・ラマ法王 般若心経を語る―空から慈悲へ―」レポート

渡邊温子

昨日からダライ・ラマ法王は日本に滞在中です。これから約一週間のスケジュールで、まず高野山で灌頂を授けられた後、東北の被災地を回られます。今日は来日最初の催しである、大阪での説法と講演会に参加してきました。

午前中は、「ダライ・ラマ法王 般若心経を語る―空から慈悲へ―」と題して、般若経について説いてくださいました。法王は説法を始められる前に、

「日本の皆さんは般若心経を読誦されないのですか?」

と質問され、僧侶が音頭をとって般若心経の読経から始まりました。

それから法王が、チベット語で般若心経の帰敬偈と八不の偈などを読誦され、般若心経について語り始められました。

まずは般若心経とからめて仏教を概説的に説明された後、「色不異空空不異色」について、般若心経の真言を五道十地を通して説明されました。

「しかし、事物が空だからといって、事物の存在を否定しているわけではないのです。事物は私たちが認識しているような姿では成立していない。それだけで何ものにも依らず独立自存のものとしては成立してはいないのです。現れは幻のようなものなのです」

敵と名付けられた自身の憎む相手や、反対に愛し執着している相手、更にはそのような対象を捉えている「自分」ということを探しもとめても、どこにも見いだすことができないと説明されました。

「さ、幻のような現れは、お腹が空いたので、ご飯を食べましょう」

と、笑って、午前中のセッションを終了されました。

午後は、午前中の質問から始まりました。その中で、中学生くらいの男の子が、

「先ほど人間は幻のようだとおっしゃいましたが、幻同士でも友情は成立するんでしょうか?」

という質問をしました。それに対して法王は、

「幻の如くですが、世俗としては成立しているんですよ。ただ自分が思っているような形では成立していないのです」

とおっしゃった後、「龍樹は『中論』の中で…」と説明を続けられました。法王は誰を前にしても、全力で法を説いておられるのが印象的でした。

法話の合間に近くの席から、

「難しいね…」

という声をいくつか聞きました。確かに、仏教用語は普段使う日本語と違うし、最初はとっつきにくいのは確かです。それに、そもそも仏教自体が一日二日で体得できるような簡単なものではないから、わからないのは当然なのかなという気もします。わからない、だからこそ勉強しないといけない。

お話の最後に、法王は、

「日本の中に仏教を学ぶ人が増えていることを嬉しく思います。日本で今後機会があれば、一カ所で数日かけて法話をしたいですね」

と語られました。

5月に護国寺で法要を行われたダライ・ラマ法王。それに見合うよう、私たちも広島のお坊さんたちのもとで学んでいきましょう!

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