2011.11.02

2014年10月30日 定例法話会 ゲン・ゲレク『道の三要訣』

geleklamtso

今回の日本別院での定例法話会では、先日日本へ再来日されたゲン・ゲレクにより法話が行われました。

ゲン・ゲレクの「再び基本に立ち返り、一番最初に学ぶべきことでかつ一番重要となることをもう一度おさらいしましょう」というご提案で、ゲルク派宗祖ツォンカパ・ロサンタクパ(1357-1419)著『道の三要訣(ལམ་གཙོ་རྣམ་གསུམ་)』の解説が行われました。

これは詩の形式が取られた短いもので、当時ラサにいたツォンカパが自分の弟子でアムドにいたガワン・タクパに宛てて送ったとされています。これに加え、パボンカワ(1878-1941)が著した『道の三要訣』の注釈に基づいて、ゲン・ゲレクが解説なさいました。

道の三要訣とは、菩提への道の3つの根本的な要因のことです。ツォンカパは『菩提道次第論大論』など多くの菩提道次第(ラムリム)に関する著作の中でそれを説いていますが、今回のテキストはそれのエッセンス版といったものです。

その3つとは、出離の心をもつこと、菩提心をもつこと、空性を正しく理解することです。

「出離の心」とは輪廻から解脱を求める心です。輪廻の中ですべての行いには結果があり、またそれはすべて苦となります。そのためには輪廻の苦しみを厭うこと、その原因である業と煩悩を捨てるべきと説かれます。

次に必要なのは「菩提心をもつこと」、菩提を求める心を発すことです。衆生は果てしない輪廻に繰り返し生まれ、そこでは絶えず苦しみがあります。そのような状態に陥っている衆生を思い、かれらをその苦しみから救うために菩提心を起こしなさいと説かれています。

3つめに必要となるのは「空性を正しく理解すること」です。そのためには縁起を理解することが必要です。縁起というのは、全ての物事には原因がありまたそれ以外の間接的な縁も含めあらゆる存在がお互いに関係し合うことで結果が起こるということです。けれどもそれらは絶えず変化していき、永遠ではく実体としてはないのです。例えば「私」というものは確かにここに存在しますが、それは永遠ではなく、結局実体としてはないのです。「私」は有るわけではないけれども、まったく無いということでもない、ということです。「実体として存在する」あるいは「あらゆるものは全て存在しない」という偏った考えではなく、存在するものはすべて縁起するということと、そして一切は実体がなく空であるということ、この2つが同時に正しく認識できなければなりません。縁起は空であり、空は縁起するものの本質ということです。


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