2011.04.30

談話:東日本大震災49日法要

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2011年4月29日大本山護国寺にて行われた東日本大震災49日特別慰霊法要でのダライ・ラマ法王の談話を翻訳しましたので公開します。

このたび日本全体が、特には地震、津波、原子力発電所の放射能漏洩といったひどい逆縁が起こったことで、多くの方の命が失われ、御家族を失ったご遺族も沢山居られます。まずはすべての日本人の方、そして特に被災地のみなさまにお悔やみ申し上げますとともにお見舞い申し上げます。

先日の地震の災害状況は世界中のニュースで報道がなされました。そのニュースを聞いた時に私も「ああ、なんてことだ」と思いました。一般にどのような土地の方でも苦しみを望まず幸福を望んでいる人しかないのです。ですからそういった自然災害による苦境が起こった時には、強い悲しみが起こります。原発事故による放射能漏洩は半分は人災といえるのでしょうが、こうした災害が起こった場合に、ひどく憂い、心がくじけてしまうわけです。

日本について申し上げますとある意味ではここは仏教国ですし、私の個人的な思いとしても、知人、友人が多くおられる場所です。ですからこのたびの報道を聞いた時に、私自身も一層強く悲しく思いました。それ以上申し上げることはなく、ただただお祈り申し上げるだけです。

私たちは仏教徒です。日本の仏教徒のみなさまも般若心経を唱え、私たちチベット人も般若心経を唱えています。逆境に陥っている時にそれを打破するため般若心経を唱える宗教的習慣があるのです。地震があったその時ダラムサラで、タイの仏教徒のグループに仏法の解説を行っていました。彼らに対して私たちは同じように般若心経を唱えたらいいでしょうとお話しました。同時にインドにあるチベット仏教のすべての寺院で般若心経を唱えるよう指示し、般若心経をできる限り多く読経できるように呼びかけを行ったのです。

また私個人としては、今回の被災地をすこしでも訪れる機会があればいいなと思いました。もちろん行って何かできるわけではありません。一般的に、困難な時とか苦しい時に友達と会うことで、友達の心を慰めることができることができることがあるのが人の心というものです。とてもつらいことがあった時に友達がきて、「あんまり心配しなくてもいいよ」といってくれると心が休まるものではないでしょうか。みなさんも同じ人間じゃないですか。ですので、私たちは知りあいも沢山いるわけですので、私がちょっと訪問することができれば、心の慰めになるのではないかなと思った訳です。そしてそのための機会として、私はアメリカ訪問の予定が決まっていました。ロサンゼルスで行事の日程があり、日本を経由して行けば、友人のみなさまとお会いできる機会となるのは一石二鳥です。ということで、二日間、昨日と今日と丸二日間日本の友人たちにお会いして、一緒にお祈りできたらいいなと思いまして、今日それが実現ましたことを大変嬉しく思います。

そして私たちは宗教者としての観点、特に仏教徒しての観点から申し上げますと、「逆境をチャンスへと変える」「逆境を菩提道へと変える」という実践法があります。逆境は既に起こってしまったことですから、それを過剰に心配しても無益です。これは『入菩薩行論』で説かれる通りです。

もしも改めることができるなら、
憂うべきことなど一体何があるのだろうか。
もしも改めることができないのならば、
憂うことで一体何の役に立つというのだろうか。

これは科学的、現実的な視点なのです。ですからみなさまのこのようにお考えいただきたいと申し上げるのです。絶望するのではなく、継続的な発展、次へとつなげて行くこと、そのように考えていただきたく存じます。

私は日本の学生さんや学校で英語を学ぶようにと常々申し上げていすので、私は少々英語を知っているということをみなさんに披露させていただきたいなと思います。

(以下、英語)

私の英語は上手だと考えてはいけませんよ。ここにも英語圏の欧米の方も居られると思いますが、彼らは私の英語がとてもブロークンだってことはすぐバレます。ですが、こんなブロークンの英語でも役立つことがあります。たとえば外国で同じ人間である他人と直接コンタクトをする時などです。

私たちは同じ人間です。感情的にも精神的にも肉体的にも同じ人間なのです。そしてみなさんの殆どは釈迦牟尼仏の教えに従っている人なのです。

私の経験というかチベットの国の歩んだきた道から申し上げると、困難な時を過ごす時に、現実を正しく認識しつづけているのならば、その過程で自分たちの心の力を強くすることができるということです。このような悲劇でさえ我々の内面の力を築くために役に立つものとなるかも知れないのです。

私は確信していますが、日本のみなさまは第二次大戦の後、数えきれない破壊があり、多くの死者を出て、広島と長崎への二つの原子爆弾の投下ということがあったものの、日本人のみなさまは決して自分たちのもっていた自信を失うことはありませんでした。そしてドイツの人々やポーランドの人々も、多くの苦しみや苦難にも関わらず、決して希望と自分たちに対する自信を失うことはなかったのです。ですからみなさま日本の方がは、過去の経験からも、経済的な問題をも含め、いま苦難の時を過ごしているものの、自分たちに対する自信を保ちつづけなければいけません。友人を失うといったこうした悲劇や悲しい状況があったとしても、いま前向きにならなければならないのです。

数年前にハイチの大地震でも多くの方が犠牲になられました。確か10万人以上もの犠牲者がでたのです。当時に私はアメリカの西海岸にいましたが、その時もハイチの人に申し上げました。さあ前向きになってください。自信をもって一生懸命に働いてください、そう申し上げたのです。今回の日本でもいまお話したように、みなさんには能力と可能性があります、いまこそここで一生懸命に働かなくちゃいけないんです。

これらの出来事は、地球温暖化に一部の原因があります。今後こうした自然災害がもっと頻繁に起こるかも知れないのです。だからこそそのための対策を講じなければなりませんし、経済危機に陥る可能性も想定しておく必要があります。そして自分たちの生活というものを見つめ直しておく必要があります。何故ならば、そのようなことが起きないという保証はないからなのです。

すべてのものは変化しています。みなさんは新しい現実を見つめる必要がありますし、その現実に即した行動をしなくてはいけません。みなさんの先進国でのライフスタイルというものは、とても贅沢なものです。いま現在の現実を見つめて、実際にはこの地球上には飢餓に苦しんでいる人が何百万人もいるんです。それらのことを考えて欲しいのです。

ここ数年、日本人の方と会合をする機会があるとき、特に学生たちと会う機会があった時に、私が彼らに強調したことは、英語を学ぶべきであるということです。そうすればみなさんの能力というものは、さまざまな国で積極的に活用できる可能性があるからです。教育分野、保険分野、技術開発などのさまざまな分野で活用できるのです。私は日本人の友人にいつも冗談で語っていることですが、みなさんの国は狭くてどんな小さな土地でもすでに使用済みです。しかし他の広大な国に行くと空き地がたくさんあります。ですからみなさんの経験や専門知識といったものは、環境破壊をすることなく、そういった空き地で活用できるものなのですし、そういう発想をみなさんと共有できたらいいなと思うわけです。

同時にここまでみなさんの前で英語圏の人にテストされながら英語を披露をしてみました。

みなさまどうもありがとうございました。

(訳/野村正次郎)

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