2010.07.18

真実の請願文

1960年9月10日ダライ・ラマ法王がチベットから亡命してすぐに中国によるチベット侵攻の犠牲になったすべてのチベット人、そしてチベット問題の一刻もはやい解決を願って著された詩がこの詩です。この詩は現在も亡命チベット社会のすべての小学校をはじめとしてするチベット社会全体で、チベット問題の解決を願い唄われています。

無量の功徳の大海という瑞祥を備えられた
寄辺なき衆生を一人子の如く想われる方々
三世の善逝よ 彼の子息よ 弟子たちよ
我がこの真実の慟哭を聞き入れ給え

生死涅槃の煩悶を除くことに円満たる牟尼の教説で
この広大な閻浮提の人々が利楽の栄光へと導かれ
そしてその護り手たる賢者や成就者たちが
十法行の営むことが更に増大せんことを

不穏なる強力な悪しき業により抑圧された
遮られない苦悩に虐げられ疲弊した衆生たち
耐え難き 争い 飢餓 疫病 これらの脅威がすべて
寂滅へと導かれ歓喜に満ちた大海へ流入せんことを

殊には雪域の敬虔な持法の民たちが
暗黒からの野蛮な兵どもにより侵された
無情な凶悪なる破壊で流した血と涙の数々のこの流れを
ただちに止め給う彼の仏の慈悲力の部隊よ 示現し給わえ

煩悩という魔により狂気にとりつかれ
暴力により自他共に滅ぼさんとする
彼の哀れむべき不穏な人々の群れよ
取捨の慧眼を得て慈愛の栄光に住さんことを

我が心に永く抱き続ける目的たる
チベット全域の自立という真の栄光が
自然成就し 政教双運の饗宴のうちに
営まれるという賢き劫が速やかに授からんことを

教説とそれを戴く政事のため 自己の民族のため
その大切な身体と生命と財産をすべて抛った
この苦行を乗り越えてきた人々たちを
彼の補陀落の救世主の慈悲よ どうか守り給え

すべては往古に 救主観自在が
勝者とその子息たちの御前において雪国の地域を
完全に護ろうと誓いし広大なる祈願のすべてが
善果を結びいまここに現出せんことを請い願わん

顕現と空との法性たる甚深なる縁起と
三宝の慈悲の力 真実の言葉の力が
業果の欺くことなき真実の力により
我が真実の請願が滞ることなく速やかに成就せんことを

【跋文】この祈願はダライ・ラマ14世テンジンギャンツォ法王ご自身が、1960年9月10日にインドヒマチャルプラデーシュ州のダラムサラのスワラグアシュラムの中に樹立された亡命政権において御書きになられたものである。このチベット人たちの祖国における平和と仏教と文化と自治権の返還を願う祈願文は、宗教人や一般人たちの総意に従い、チベット政府の官僚たちの委嘱により記されたものである。

訳=ゲシェー・ロサン・チャンパ+野村正次郎


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