釈迦に対する讃・加持近入


Created: 2016-09-18 Last updated: 2016-09-19 Author:野村 正次郎

三世を解すインドラとその敵アスラ
プラムディタ 竜王 そして大仙たち
彼らが誇るその王冠の宝飾は
彼の君の蓮華座の荘厳となる

御身は金光を放ち栄華の威光で包まれている
御言葉はガンダルヴァの旋律さえも及ばない
御心は千萬の光に輝きすべてを明らかにする
彷徨う無辺の衆生の最勝なる導師 釈迦族の首長

澄みきった秋空に現れた星たちが
大海のなかに燦々と輝いているように
澄みきった心に現れた君の徳は
互いに交わらず明瞭に写される

月光に若き水生が触れるように
私は胸元で指先を萎ませている
一心に君を想い 君に対面し
ここに詠む讃をどうか聞き給え

星たちが天空の明月を囲み群れるように
勝子や勇者たちの群れに御君は囲まれる
牛の群れを率いる先導牛のように
阿羅漢を引率き連れ導き給う

天空すべてを覆う広大な金色の光は
千の網となりすべてを捉えるだろう
御身は空の筋へと神変を示現し
鶩の王の如く群れを率い飛ぶ

その時往古より積集された賢業は
時を熟して百千の天人たちに
御君の尊顔を拝謁させるのと同時に
悪しき心の連鎖より解き放たれた

勇猛なる御君は菩提樹の下にて
慧と慈の軍で狂った魔の軍勢を
残すことなく制圧し給われたのである
それは強風で黒雲が払われたようであった

武器や甲冑を用いることもなく
たった独りで千万の軍に立ち向かい
すべてを制圧された このような戦を
君以外の一体誰が戦い得ただろうか

斯の如く君は慈しみの焔によって
欲天の諍いの心を打ち砕いたとはいえ
常に君は衆生にその慈愛の宝石を
偏ることなく等しく与え給われる

君は衆生を利益するためであるのなら
微塵たりとも疲れを知ることはない
衆生もまた君の功徳を語るのに
疲れることは有り得ない

深い海の底のように甚深な御心
天たちの鼓の如き善説の御言葉
須弥山の頂きの如く比類なき御身
これを眼にしそれを追想するだけで
有意義たる彼の偉業を為せる君よ

すべての世界の一切有情たちが
すべて同時に疑問を投げ掛けるとも
彼らすべてのそれぞれの眼の前に
すべて同時に御身と言葉を化現させる
偉業を為しながらも分別を寂静にする

君の身口意のこの秘密の行相は
勝子・声聞・独覚がいくら考えようとも
彼らによって量り知り得る対象ではない
然れば梵天や帝釈等は言うまでもない

ガルトマーンは翼を拡げ空を飛び巡り
自らの力が尽きた時に帰路に就くのであって
天空が尽きるが故に帰路に就くのではない
君の功徳を語ることもまたその如くである

翼の力を全うしているガルダたちの
航路を小さな鳥が追い掛けるように
十力を究竟され赴かれている
最勝道を向かおう この私は

実相の義を見つめる智慧の眼が損なわれ
厭離と菩提心を享受するも乏しくしている
強力な煩悩の敵に途絶えなく愛されている
我執の深き崖底へと墜ちてしまっている

このように無力な境涯に有る時に
もしも大慈の君に見放されるのなら
劣者をより深く愛し護る君以外の
一体誰を依処としたらよいのだろう

五濁で汚染し尽されたこの場所は
他のものには見放されたと雖も
主 君はこれを摂取すると誓い給われた
勝子たちが白蓮の如しと称讃されたのは
無意味なことではなかったはずだ

然れども君の御業が所化たちを
慮らず無関心であることは有り得ない
これはただ悪劫の私の過ちに過ぎない
それゆえ君に過失が及ぶこともないだろう

いまよりは菩提の核心へと魔の軍勢に
打ち勝つことができるようになるそれまで
繰り返し生を受けても君に摂取され
教説の甘露に飽くことのなきように

『如来応供正遍知明行足善逝世間解無上士調御丈夫天人師仏世尊釈迦牟尼如来に対する讃 加持近入』と名付けるこれは、持蔵者ジャンペル・ギャツォという私の弟子の委嘱によって、多くを聴聞をした勝者の教国徒ロサンタクペーペルがヒマラヤ地方の雪山の王であるオデグンゲルのラショルにて識したものであり、筆記者持蔵者バドラパーラが文字にしたものである。