2009.12.08

自分のことは自分でしなさい。私は解脱の道を示した。

DalaiLamaGlasses

広島平和会議でご自分のメガネを拭かれる法王

伝統と近現代が両立する国・日本

1967年に私は日本にはじめて来ました。その時から話していることです。

日本は近代的物質的発展を遂げた国であり、同時に神道などに見られるような自然環境を敬うような伝統的信仰をもった国です。そしてその上に伝統的な仏教もありますし、日本は仏教国といってもよく、仏教寺院も沢山ある国です。

仏教とは、私の西欧の友人に言わせれば、単なる宗教ではなく、心の科学であるとも言ってよいものです。みなさんの国では仏教的な思想や文化というものが先祖代々伝わってきているのです。

日本は物質的発展と、精神的発展を両立させながら、より高度な発展をする可能性を充分にもっています。私は最初にこの国を訪れた時から申し上げています。この考えはいまも同じです。

物質的発展と精神的発展

物質的な外面的な発展によって精神面が充たされると思うのならば、それは間違いでしょう。人間というものは、いろいろな感情を起こす動物ですが、そういういろいろな感情が精神に起こっている時に、外側の物質的なもので、その内面に満足感を与えることは大変難しいのではないかと思います。肉体的、身体的な外部の物質と関係している時の苦しみ、たとえば病気などの痛みなどについてはもちろん物質的なものによってその苦痛を和らげることができるます。しかし、心のなかに起こってくる様々な悩みや苦しみを外側の物質によって解決することができないのは明らかだと思います。ですので、心のなかの問題については、仏教の考え方がとても役にたつのではないかと思います。

最近の社会では、とても忙しい人生を送るようになり、毎日が目まぐるしく、両親が子供たちと過すための充分な時間もないような時代になっています。そういうなかで少年犯罪や新たな社会問題が起こってきています。先日もアメリカでこういった青少年の犯罪についてのシンポジウムがあり、私もそれに参加しました。そのシンポジウムには精神科医・科学者・哲学者・ボランティア活動家、こういった方々とみんなで社会問題や青少年の犯罪の問題は、家庭のなかでの愛情が欠乏していることに原因があるのではないか、といった結論に達しました。私もその通りだと思いました。

現代社会は非常に多忙で、工業製品に対する欲望が渦巻いています。工業製品が私たちに愛情を与えてくれることなどありません。ですがそれらは我々にとても大切なものです。私たちは社会のなかでもっと愛情というものを与えあう必要があるのです。そのためには、仏教的な考え方や神道などの自然崇拝の考えかたは必ず有益なものではないかと思われます。

仏教とは心の宗教である

仏教というのものは、御寺のなかで御祈祷したり、仏像や仏殿のことを指しているのではありません。仏教というものは、心というものがどういうものであるか、悪い心というものがどういうものであるのか、それらをよく理解して、こういう悪い心にを、こういう心によって自分で変えていくということを説いている教えなのです。

ですので、お釈迦さまや観音さまや不動明王など仏像の前で「私の苦しみを取り除いてください」とお祈りをしたからといってどうにかなるというようなものではありません。またお釈迦さまも「自分のことは自分でしなさい。私はあなたたちに解脱の道を示した。あなたが解脱するかどうかはあなたの手にある」とおっしゃっています。ですから、お釈迦さまに対して我々の悩みや苦しみを何とかしてくださいといってもそれは無駄なことなのです。悩みや苦しみを克服するのは自分自身でやらなくてはならないんです。

自分のことは自分でしなさい。私はあなたたちに解脱の道を示した。
あなたが解脱するかどうかはあなたの手にある


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