2015.05.13

ゲシェー・ケルサン師の「社会人の生活信条」

本山デプン・ゴマン学堂より日本での専任の先生に選出されて先日来日されたゲシェー・ケルサン師と今後の活動について様々な打ち合わせをしていました。

ゲシェー・ケルサン師から「そういえばこういうものがあるので、これを日本語に訳してくれませんかね」と頼まれました。師はザンスカールのプタク僧院で教鞭をとっておられた時に、近隣の村の人たちは在家の人たちが様々な悩み相談に来たり説法を頼まれたりしていましたが、若い僧侶たちの指導もなかなか忙しく時間もとれず、近隣の村の人たちも日々の仕事に追われていたりしてなかなか時間がないので、ザンスカールの言葉で以下のような「社会人の心得」というものをまとめたらしいです。

「私はこれからみなさんに仏教の教えや生き方を教えていく機会がありますが、私が一般の方たちに伝えたいことはここにまとまっています。いろんなテキストや難しい経典に書いてあることも簡単にいうとこういうことなんです。もちろんここに書いたことは私の創作ではありませんし、ソンツェンガンポ王の教えなどからまとめたものですが、みなさんの役にたつのではないかなと思いますので、これを私の名刺代わりに使えないかなと思います。」

「私は日本に来るのもはじめてですし、外国に出るのもはじめてです。ここに書いてあることで、たとえば大小便をあちこちでしてはならないとかいったことは、この日本では関係ないことですが、大部分は仏さまの教えの要点から来るものです。特定の人種や国や地域のために説かれたものでもありませんし、どんな時にでもいつでも役にたつものです。ここに書いてあることを忘れないようにしてくれたら、みなさんの社会はもっと楽しくのんびりとしたものになると思います。詳しくはまたみなさまにお会いしたときにお話できるといいなと思います。」

穏やかな春の心地よい風に誘われて鳥たちが啼く森のなかで、まずは日本のみなさまにゲシェー・ケルサン先生からの最初の日本人のみなさまへのメッセージは以下の通りです。(原文はチベット語ラダック方言で書かれています。)

  • 仏・法・僧の三宝を理解し、帰依し、敬意をもって礼拝し供養しましょう。
  • 今世と来世に役に立つ仏法を実践すべきである。
  • 両親の恩を思い忘れず、その言葉に耳を傾け、奉仕すべきである。
  • 徳のある者を尊敬し、彼らと懇意にし、道を同じくすべきである。
  • 年長者、隣人、恩人と仲良くし、彼らに奉仕すべきである。
  • 親族、友、師、先輩には公平で、常に長く付き合うことを考えるべきである。
  • 他人の言葉尻に囚われず、公明に客観的・しっかりと聞くべきである。
  • 行儀よい良き人たちをお手本として、その振る舞いを真似るべきである。
  • 飲食、財産などは自分に見合うものを求め、過度に求めず生活すべきである。
  • 自分に利益を与えてくれる人たちのあらゆる恩を何度も想うべきである。
  • 貸借りのある人には、様々な形で可能な限り報いようと努めるべきである。
  • 他者が自分よりも財や知識に恵まれていることを嫉妬したり厭うべきではない。
  • 他者を欺く者、悪行に誘う者の意見を聞かず、自分を堅固に持つべきである。
  • 誰に対しても悪しき言葉で傷つけることなく、やさしい言葉で語りかけるべきである。
  • どんな小さな仕事でも大きな仕事でも、長期的な視点をもち、焦るべきではない。
  • 地域や地元の仕事は、自分個人の仕事よりも重視するべきである。
  • 地域や地元の仕来りや決まりごとに反し、悪業を決して為すべきでない。
  • 公共財産や他人の財産を秘密裏に私的流用すべきではない。
  • 人種・宗教・宗派・出身地・居住地などによる差別をしてはならない。
  • 身体障害者、病気の人、劣悪な環境にある人を介護してあげるべきである。
  • 各国・地域の宗教・文化のすべてが衰退せず興隆するよう努めるべきである。
  • 欲を小さく足るを知り、環境保護をするべきである。
  • 慈悲等の非暴力道と縁起思想の意味を理解し、間違った解釈をなすべきでない。
  • 未来の夢や希望と幸福を叶えるために、知識の向上に努めるべきである。
  • 大小便をあちこちでせず、家の内外の環境の土地や水まわりを清潔に保ちなさい。
  • 世界全体に役立ちたいという大きな目的意識と責任感をもち、社会精神とよき志を心に強くもつべきである。
  • 罪業や放逸の源となる肉食・飲酒・喫煙なはなるべく少なくする。
  • つまり身口意の行を利他行となし、不放逸であるべきである。

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